研究事例

数学・数理科学分野と産業界・諸科学分野との連携研究事例集
研究テーマ

データ空間の曲率を用いた気象データ解析

研究者名 小林 景 研究者所属 慶應義塾大学 理工学部
キーワード 気象データ解析,CAT(k)空間,曲率,測地距離,Fréchet平均
研究内容
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。

イギリスのMet Officeが公開しているイギリス国内の降雨量データおよび日本の気象庁が公開しているアメダスデータに対して,その年周期性が過去数十年でどのように変化したかをデータの幾何学的構造に着目して調べ,これまでに検出されなかった新しい種類の気象変動を調べることを目指した.

B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。

データ点を頂点と持つようなグラフにより,データが乗っている空間(データ空間)の測地距離を近似した.さらに,CAT(k)性とよばれる曲率の変化に着目して距離変形を行い,それに伴う新しい種類の分散を提案した.

C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。)

幾何学的な構造を考慮した新しい分散を用いて過去の降雨量データを調べたところ,これまでの分散の定義ではとらえられなかったような年ごとの降雨量データの「ばらつき」の増大が観測された.  今後は気象の周期性をより細かくとられるための数理的な指標の開発を目指す.

D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。

London School of Economicsで気象時系列データの解析を行っているCentre for the Analysis of Time Seriesの   Henry Wynn教授との共同研究をきっかけに本研究が始まり,気象データを扱う研究者へと交流が広まった.