研究事例

数学・数理科学分野と産業界・諸科学分野との連携研究事例集
研究テーマ

免疫多様性の解読

研究者名 小林 徹也 研究者所属 東京大学 生産技術研究所 准教授
キーワード 免疫、NGS、次世代シーケンス、T細胞、B細胞、癌、多様体学習、低次元化、情報論的解析
研究内容
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。

我々の免疫状態は体内に存在する獲得系免疫細胞であるT細胞・B細胞の多様性によって大きく左右される。近年この多様性を次世代シーケンスで計測することが可能になったが、高次元かつ疎なシーケンスデータから免疫細胞の多様性を定量的に解析する解析方法の開発が近年大きな課題となっている。

B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。

多様体学習や情報論的手法を用いることで、データの高次元性や疎性を回避して、異なるサンプルから得られた免疫細胞の差異や原因となる細胞を同定する解析手法(RECOLD)を開発した。

C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。)

この手法により、セザリー症候群(皮膚の悪性リンパ腫の一種)の患者から得られた免疫細胞シーケンスデータのみから、症状の重篤度に依存したクラスタリングが得られることを示した。本手法を発展させ、様々な免疫関連疾患や癌免疫などに関わるデータから、病状に関連する免疫多様性の変化や原因となる細胞の同定を行うことを目指している。

D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。

研究自体は研究者が学生と公開データなどを用いて独自に開始したが、ここ数年は免疫シーケンスの受託を行うベンチャー企業と共同研究契約を結び、特にデータ解析面で技術情報の交換を行っている。