研究事例

数学・数理科学分野と産業界・諸科学分野との連携研究事例集
研究テーマ

離散力学理論を用いた楽器の物理シミュレーション

研究者名 谷口隆晴 研究者所属 神戸大学 大学院 システム情報学研究科 准教授
キーワード 次世代電子楽器,サウンドレンダリング,弦楽器,管楽器,微分方程式モデル
研究内容
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。

ギターやピアノ,クラリネットなど,様々な楽器に対して,その動きを記述する微分方程式モデルが提案されている.このような微分方程式モデルによるシミュレーションに基づく,新たな電子楽器の構築を目指す. また,コンピューターグラフィックスの分野では,映像の描画に物理シミュレーションが利用されることがあるが,サウンドレンダリングと呼ばれる,その際に発生する音も物理シミュレーションで計算しようとする試みが進められている.

B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。

楽器の物理モデルの多くは,力学理論に基づいて導出されており,ハミルトン系としての構造をもつ.また,実際に音を計算するためには,現象の時間スケールに比較して長時間の計算が必要となることが多い.そこで,ハミルトン系としての構造を利用し,長時間計算に有効なシミュレーション手法である離散力学理論を応用することで,安定に計算が可能なシミュレーション手法を開発した.

C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。)

ピアノやギターなど,様々な楽器について,運動方程式を解くことにより,弦などの構成要素の動きを物理学に忠実に計算するシミュレーターの開発を進めている. このような方式を採用することにより,演奏者の演奏法に合わせて豊かに音が変化する電子楽器が開発できると期待される. また,同様のシミュレーション手法はコンピューターグラフィックスに応用することで,映像と音を,物理シミュレーションに基づいて同時に描画できるような技術の開発を目指す.

D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。

研究室に配属された学生の希望による.