研究事例
数学・数理科学分野と産業界・諸科学分野との連携研究事例集
研究テーマ
ウイルス感染に対する宿主応答の統計解析
研究者名 中岡 慎治 研究者所属 北海道大学大学院先端生命科学研究院キーワード ウイルス、免疫、T 細胞、次世代シーケンス、遺伝子発現解析、統計解析、情報解析
研究内容
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。
ウイルスが宿主内で増殖する際、宿主側の機構を巧みに利用する。ヒト免疫不全ウイルス (HIV) は、宿主側の免疫応答 (BST2) から逃れるためのウイルスタンパク質 Vpu を巧みに利用している可能性は示唆されてきたが、HIV はヒトとチンパンジーのみ感染し実験検証できないため、生体内 (in vivo) における機構は不明であった。
B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。
HIV 感染を可能にしたヒト化マウスを利用した生体内の CD4 陽性 T 細胞に対する網羅的遺伝子発現データを解析し、抗 HIV 活性下でもウイルスが免疫回避できる仕組みを調べるため統計・情報解析手法を実施した。
C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。)
HIV 感染前後の細胞の遺伝子発現状態を比較解析したところ、宿主側の抗 HIV 活性 (BST2) 存在下でも感染除去に至らない可能性を見出した。情報統計解析によって HIV 感染持続に関与する因子の候補を選定した。
D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。
以前は別の研究課題で共同研究を行っていたが、ウイルス感染に対する宿主応答の統計解析を実施するための新たなプロジェクトが、研究議論の中から生まれた。