研究事例

数学・数理科学分野と産業界・諸科学分野との連携研究事例集
研究テーマ

ショウジョウバエ後腸の捻転現象に関する数理的研究

研究者名 秋山正和 研究者所属 北海道大学 電子科学研究所 助教
キーワード 数理モデル,形態形成,発生生物学,数値解析, 3Dバーテックスダイナミクスモデル
研究内容
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。

大阪大学・松野教授グループとショウジョウバエ後腸の捻転メカニズムに関して共同研究を行っている.自然界のショウジョウバエの後腸は必ず片方側だけに捻転するが,松野教授(阪大)の発見した蛋白(Myo31df)により捻転方向を逆転することができる.この逆転現象は後腸だけでなく,他の臓器も逆転することから,形態形成において非常に重要なメカニズムが内包されている可能性がある.

B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。

実験事実を数理的に検証し,仮説:「個々の細胞のキラリティーが増幅され,器官全体の非対称性化が進む」ということを提案した.さらに3次元のVertex Dynamics Modelを構築し数値計算を行うことで,少なくとも数値計算上では,正しいことが示された.

C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。)

シミュレータから実際の細胞のねじれ角が非常に小さくても,全体の形態は大きく捻転することがわかっている.実験データにノイズが多いため,直接的な実験データだけから,上記の仮説を証明することは難しい.そのため,ノイズの多いデータから真の実像を推定するような方法論を構築中である.

D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。

新学術領域の公募研究時の共同研究


ショウジョウバエの腸も左右性をもつ
(阪大:松野教授との共同研究)
自作のショウジョウバエ腸管の捻転シミュレーター