AIMaP事業概要

ご挨拶

文部科学省委託事業「数学アドバンストイノベーションプラットフォーム」(AIMaP: Advanced Innovation powered by Mathematics Platform, H29-34年度)は、「数学・数理科学と諸科学・産業との協働によるイノベーション創出のための研究促進プログラム(略称:数学協働プログラム)」(中核機関:統計数理研究所, H24~28年度)で構築された研究活動のネットワーク型基盤を受け、平成29年度より5年間にわたって実施しております数学・数理科学と諸科学分野・産業との協働を推進する組織的な取り組みです。九州大学マス・フォア・インダストリ研究所(IMI)が幹事拠点となり、全国12の数学・数理科学機関を協力拠点としてオールジャパン体制を築いて、潜在する数学・数理科学へのニーズを積極的に発掘し、その問題の解決にふさわしい数学・数理科学研究者との協働による研究を促進する仕組みを構築します。

 数学は、近代科学を記述する言語であり、数学・数理科学は、古くより、様々な形で諸科学分野や産業を支える基盤となる学問です。今、世の中はビッグデータやAIブームで湧いていますが、最近のコンピュータやネットワークの発達によって、社会のあらゆる面で劇的な変革が起こっています。ドイツが提唱し世界を席巻している「第4次産業革命(Industry4.0)」はIoT(Internet of Things)を基盤にしたプロジェクトで、CPS(Cyber Physical Systems)の実現によって、設計や開発、生産現場において、効率的でスマートなシステムを実現しようとするものです。今日までの技術革新の大半は「モノ」の生産革命であったのに対し、これはコト(サービスや概念)の生産革命で、概念を操作する理論を表現する数学の重要性は言を待ちません。隣の中国でキャッシュレス社会への移行が猛スピードで進んでいるのには驚くばかりです。我が国でも、第5期科学技術基本計画(H28-32年度)において、「超スマート社会(Society5.0)」建設が目標に掲げられ、基盤技術を支える横断的な科学技術としての数理科学の重要性が強調されています。

数学・数理科学は情報技術の基盤であるだけではありません。数学によるモデル化技法の発展はHPCの高性能化と相まって、諸科学分野を大きく前進させ、産業界において斬新な技術をもたらしています。最近では、金融・保険など経済関連分野のみならず、人間の行動・心理のモデル化や社会システムの構築や制度設計に関わる社会科学・人文科学分野にも数学が大きく進出しています。ビッグデータを利活用する技術開発、公平で安心な社会システムのデザインに数学は不可欠なのです。米国では数学者(Mathematician)がつねに人気職種のトップクラスの地位を保ち続けていますが、最近では、ドイツにおいても、数学博士が引っ張りだこで、かなりの高給で企業に雇われるので、優秀な若手が必ずしも大学での研究職を希望しないということを耳にします。欧米では、ゼロベースで根本からものごとを考え、求められるモノ・コトに対して、定式化からはじめて完成にいたるまで全体的な組み立てができる数学・数理科学の真価が認識され、それを担う人材が社会の中枢で活躍しています。これと比較して、我が国の取り組みが遅れていることは否めません。

AIMaP事業では、九州大学IMIが幹事機関となり、我が国を代表する数学・数理科学拠点の強みを生かしつつ、その力を結集できる全国的なネットワークを構築することによって、数学・数理科学と諸科学や企業との融合研究を促進するための業務を次のような段階を踏んで実施します。

1.諸科学・産業との協働に関する情報の集約・分析、重点化連携分野の選定

2.選定された重点化連携分野へのアプローチ

3.重点化連携分野での共同研究の促進

4.活動のフォローアップ、成果やノウハウ等の集約・整理、水平展開・運営改善への活用

特に、以下の活動を重視しています。

a. 幹事機関に数理技術相談ネットワークを設置して、全国の数学・数理科学のニーズやシーズの情報を収集して集約し、その分析を行い、情報発信に努めます。連携の取り組みの成功事例など得られた成果を集約するデータベースを構築してミエル化を行い、関係機関のネットワークの中で横断的に展開することで、利活用の便をはかります。

b. 数学者・数理科学者が外に出かけていって、より積極的な形の交流を行います。選定された重点化連携分野に関係する学協会の会議や業界団体のイベントにおいて、数学応用セッションやチュートリアルを企画し、異分野研究者との直接的な交流を通じて、数学・数理科学の有効性を訴求します。

c. これらの活動を持続するためには、未来のイノベーションを担う若手研究人材の育成が急務です。社会連携協議会(日本数学会)の事業(異分野・異業種研究交流会、キャリアパスセミナーなど)を支援し、また、産学連携の大きな装置となる中長期研究インターンシップを推進します。さらに、アンケートなどによって大学院生の進路の実態把握に努め、キャリアパス拡大のための方策を探ります。

AIMaP事業は、数学・数理科学の研究者およびそれを応用する研究者、さらに利活用する方々に広く開かれています。わが国の数学・数理科学の知を結集し、諸科学・産業界に文字通り異次元のイノベーションをもたらされることを願ってやみません。関係各位におかれましては、本事業に積極的に参画してくださり、盛り立ててくださいますよう切にお願い申し上げます。                    

業務主任者 福本 康秀            

九州大学マス・フォア・インダストリ研究所・所長