RESEARCH CASE研究事例

本事業にて実施された研究集会等にて得られた成果及び発展事例や訴求企画以外にも情報提供を受けてAIMaP事業にて取りまとめた
数学の応用研究事例を集めました。



タイトル/研究者/キーワード 内容 ファイル
ポスト量子時代における次世代暗号の構成と安全性評価
高木 剛 (九州大学マス・フォア・インダストリ研究所 教授)
キーワード:情報セキュリティ, サイバーセキュリティ, 公開鍵暗号, RSA暗号, 楕円曲線暗号, ポスト量子暗号
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 現代暗号は、盗聴を防ぐ単なる通信路としての狭義的な暗号だけでなく、IT技術の進歩により、秘匿データ検索、著作権保護、電子投票、仮想通貨など、その用途は急速に拡大してきています。実社会での暗号利用を目的として、効率的な暗号アルゴリズムの設計と物理的攻撃などに対して安全な暗号実装技術の研究をしています。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 情報社会の安全性を支える暗号理論の研究を進めています。想定される攻撃者の解読能力や計算理論の進歩を取り入れた将来に渡り安全となるセキュリティモデルを考察します。量子計算機の時代においても解読困難となる新しい数学問題(符号理論,格子理論,多変数多項式,グラフ理論など)を応用したポスト量子暗号の構成と安全性評価を行ないます。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 情報社会の安全性を支える暗号理論と情報セキュリティの研究を進めています。特に、著作権保護、電子投票、仮想通貨など実社会での暗号利用を目的として、効率的な暗号アルゴリズムの設計と物理的攻撃などに対して安全な暗号実装技術の構築を目指しています。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 2011年から九州大学で開催されたスタディグループワークショップがきっかけとなり、東芝研究開発センターや三菱電機などの民間企業と次世代暗号に関する共同研究を開始しています。 ファイル
高階エネルギー最小化による医用画像領域分割
石川 博(早稲田大学理工学術院)
キーワード:医用画像処理, セグメンテーション, 事前知識, 形状事前分布
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 近年ますます高解像度化しているCTやMRIなどの医用画像の3D画像化による可視化や、定量的画像測定による病態変化の正確な把握のために、画像の領域分割(セグメンテーション)は必須のプロセスです。その代表的な手法であるエネルギー最小化において、高階エネルギーの最小化が最近可能になりました。これによる、臓器の形状などの事前知識を利用した領域分割の研究をしています。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 全体の枠組みはベイズ推定に基づいています。また髙階エネルギーの最小化を可能にするため、擬ブール関数最適化という離散数学を利用し、変数を加えることにより低階のエネルギーに変換する手法を発見しました。また、さまざまな数理的画像解析手法により、臓器の形状などの事前知識に対応して画像に適応して髙階エネルギーを生成しています。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) この枠組みに基づいた手法により、従来自動化が難しかったセグメンテーションを実用化し、臨床現場にこれまでない可視化や定量化を提供し、手術などをより安全かつ確実に行うことを可能にすることで医療の質を向上することに貢献しています。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 髙階エネルギーの最小化手法の公表後、富士フイルムからコンタクトがあり、2011年から医用画像処理ソフトウェアの研究開発に協力しています。 ファイル
位相的データ解析の材料科学等への応用
平岡裕章(東北大学 材料科学高等研究所 教授)
キーワード:シリカガラス, 構造解析, トポロジー(位相幾何学), パーシステントホモロジー, 機械学習
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 液体のシリカを急冷するとガラス状態になることが知られているが、液相とガラス相はともに無秩序系であることから、相転移による構造変化や相転移点の解明は困難な問題である。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 位相幾何学(トポロジー)を活用した解析法であるパーシステンとホモロジーを開発し、従来の手法では扱うことができないマルチスケールな解析手法を構築した。さらに表現論・確率論・統計を駆使して、データ構造のスケールに関する頑健性で重みをつけた統計的機械学習法(カーネル法)(PWGK)を提案した。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 本手法により、シリカの液相とガラス相の構造変化をデータ科学的視点から抽出することに成功した。 シリカの相転移点の統計的検出の他、タンパク質の立体構造の分類問題などにも本手法を応用し、論文を執筆した。 本手法の普遍性より、現在材料科学以外の様々な分野(生命、医療等)へ適用されている。企業との共同研究も多数実施している。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 数学協働プログラムのワークショップ「Topological Data Analysis on Materials Science」(H27.2) での議論がきかっけとなり、東北大学材料科学高等研究所、九州大学大学院数理学研究院・マスフォアインダストリ研究所、統計数理研究所間の連携が始まった。 ファイル
トポロジーと力学系の融合とその流体解析への応用
横山 知郎(京都教育大学 数学科 准教授)
キーワード:トポロジー(位相幾何学), 力学系, 流体, 遷移現象, 有限数学
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 流体を利用した機械のメーカーに対して,流体の位相幾何学的に解析することにより,機械の効率の向上を目標とした. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 (非圧縮な)曲面流のトポロジーを有限情報として一意に表現するために,位相幾何学と力学系と組み合わせ論を用いた. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) ある流体を用いた機械に対して,理想的な流れのトポロジーを求めて,理想の流れが近づくように機械を改良することにより,流体を利用した機械のメーカーの機械の性能を2倍に向上させた. D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 共同研究者が「JSTの新技術発表会」で名刺交換をしたことにより技術相談が始まった.その後,技術相談が定期的に行われるようになった.ファイル
哺乳類着床前胚の発生動態解析
小林 徹也(東京大学 生産技術研究所 准教授)
キーワード:発生, 着床前胚, 人工授精, 畜産, 生殖補助医療, トラッキング, コンピュータービジョン, 整数計画法, 機械学習
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 哺乳類着床前胚をなるべく良い状態で培養・維持することは、生殖補助医療や畜産の分野における人工授精の成功率を高めるために不可欠であるが、胚の状態を客観的かつ定量的に評価することが問題となっている。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 共同研究者が計測した胚の4D(3D+時間)イメージングデータに対して、既存の画像解析・コンピューター日jヒョンのみならず、整数計画法を用いた細胞追跡、得られた細胞系譜データに対する機械学習手法などを組み合わせ、胚の発生過程を定量的な系譜データをもとに評価するシステムを構築・発展させている。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 哺乳類胚について安定した系譜追跡システムの構築に成功し、現在異なる胚の培養条件化でのデータ取得を進めている。将来的にはそれらの系譜データを解析することによって、培養条件の違い、胚の収集方法に依存した胚の発生状態の変化をデータから解析・予測するとともに、それをよりよい培養液や人工授精プロトコルなどの開発にフィードバックすることを目指している。 D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 研究者は博士研究員時代、神戸理研発生再生科学総合研究センターで3年間、生物・発生分野の研究者らの中で研究を行っている。主となる共同研究者とのその時の人的なつながりで連携が始まった。 ファイル
免疫多様性の解読
小林 徹也(東京大学 生産技術研究所 准教授)
キーワード:免疫, NGS, 次世代シーケンス, T細胞, B細胞, 癌, 多様体学習, 低次元化, 情報論的解析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 我々の免疫状態は体内に存在する獲得系免疫細胞であるT細胞・B細胞の多様性によって大きく左右される。近年この多様性を次世代シーケンスで計測することが可能になったが、その高次元かつ疎なシーケンスデータから免疫細胞の多様性を定量的に解析する解析方法の開発が近年大きな課題となっている。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 多様体学習や情報論的手法を用いることで、データの高次元性や疎性を回避して、異なるサンプルから得られた免疫細胞の差異や原因となる細胞を同定する解析手法(RECOLD)を開発した。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) この手法により、セザリー症候群(皮膚の悪性リンパ腫の一種)の患者から得られた免疫細胞シーケンスデータのみから、症状の重篤度に依存したクラスタリングが得られることを示した。本手法を発展させ、様々な免疫関連疾患や癌免疫などに関わるデータから、病状に関連する免疫多様性の変化や原因となる細胞の同定を行うことを目指している。 D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 研究自体は研究者が学生と公開データなどを用いて独自に開始したが、先方から直接コンタクトが有り、ここ数年は免疫シーケンスの受託を行うベンチャー企業と共同研究契約を結び、特にデータ解析面で技術情報の交換を行っている。ファイル
距離行列を木グラフで要約するための方法論と細胞生物学への応用
早水 桃子(統計数理研究所 助教)
キーワード:グラフ理論, 距離行列, 最小全域木, 細胞の分化, 遺伝子発現データ解析, 進化系統樹, 主成分分析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 近年の細胞生物学では,多様な細胞の遺伝子発現データから細胞分化の木モデルを自動構築する方法が求められている.細胞の遺伝子発現パターンの違いから細胞同士の「距離」を計算し,その距離行列を入力として最小全域木問題を解くという方法はプラクティカルには有用だが,正解が一つに決まるとは限らないし,必ず意味のある結果が得られるという保証もない. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 ゲノム配列の違い(距離)から系統樹を構築するための理論を応用して,細胞の遺伝子発現パターンの違いから細胞分化の木モデルを構築するための理論を展開した. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 与えられた距離情報が木グラフで表せるかをチェックするための「判別式」を与え,その判別式を満たすケースでは正解の木が一つしかなく,しかも最小全域木問題を解くアルゴリズムで簡単に求められることを証明した . 「主成分分析のグラフ版」といえる方法の創出を目指して, YES/NOのチェックだけでなく,距離空間と木のフィッティングの良さをはかる定量的尺度を作ろうとしている. D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 京都大学iPS細胞研究所の実験研究者から個人的に研究上の相談を受けてデータ解析を行ったことがきっかけで,科学的に信頼できるデータ解析ソフトウェアを開発するための数学的な考察が始まった. ファイル
社会科学に現れるネットワークに対するネットワークモデルを用いた統計解析
谷口隆晴(神戸大学 大学院 システム情報学研究科 准教授)
キーワード:高齢化問題, 金融ネットワーク, システミックリスク解析, ネットワーク解析, 仮説検定
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 高齢化地域の抱える諸問題を解決するためには,その地域に住む住民の交流や相互の助け合いが不可欠である.そのため,交流や助け合いを促すような様々な取り組みが行われているが,その効果を評価するため,特に,住民同士のつながりに着目した効果の解析法・検証法が求められている. このようなネットワーク解析法は高齢化問題に限らず,金融ネットワークにおけるシステミックリスク解析など,様々な社会科学分野に応用が可能である. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 指数ランダムグラフモデルをはじめとする,パラメータをもつネットワークモデルを統計モデルとして利用することにより,心理学者らの仮説を検定するための統計検定手法を提案した. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) この方法により,人と人との交流を促すような取り組みによって,確かにネットワークに変化が生じたかどうかを統計的手法により客観的に評価できるようになった. 現在は,時系列解析の手法と組み合わせることで,ネットワークに生じた異常検知などの技術の構築を目指している. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 学内で行われた,文理融合研究を促進するためのマッチングによる. ファイル
生理学的薬物動態モデルの応用によるアレルギー発症シミュレーションモデルの構築
谷口隆晴(神戸大学 大学院 システム情報学研究科 准教授)
キーワード:アレルギー, 生理学的薬物動態モデル, 抗体抗原反応, 免疫複合体, 免疫応答
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 アレルギーとは,特定の物質に対する免疫の過剰な働きである.これに対する治療法としては,抗原の低アレルゲン化といった抗原に着目したもの,薬物による免疫細胞の抑制といった免疫細胞に着目したものなど,抗原と免疫細胞のどちらかに着目したものが多い.そこで,本研究では,抗原と免疫細胞の両者を複合的に扱うことのできるモデルおよびシミュレーション手法を構築し,新たな治療法の開発に役立てることを目指す. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 創薬の分野では,生理学的薬物動態モデルと呼ばれる,人の各臓器を機能ごとに分けてコンパートメントとしたコンパートメントモデルに基づくシミュレーションにより,体内の薬物濃度の予測などが行われている.本研究では,これを応用することで血中の抗原濃度や抗体濃度を予測するシミュレーション手法を構築している. また,このようなシミュレーションでは,モデルのパラメータに対して十分なデータが得られない場合が多いが,そのような場合においても,意味のあるパラメータを絞り込むアルゴリズムの開発も進めている. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 患者一人一人の体質に合わせたシミュレーション手法の構築を目指す.これにより,抗原摂取可能限度についての, 免疫応答における個体差を踏まえた定量的な考察や, 治療薬の投与の適切なタイミングの見積もりなどを行えるようにしたい. また,モデルパラメータの値に対する事前知識が無い場合にも,確からしいパラメータを絞り込みやすくなるような,パラメータ推定方法の確立も目指す. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 研究室に配属された学生の希望による. ファイル
離散力学理論を用いた楽器の物理シミュレーション
谷口隆晴(神戸大学 大学院 システム情報学研究科 准教授)
キーワード:次世代電子楽器, サウンドレンダリング, 弦楽器, 管楽器, 微分方程式モデル
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 ギターやピアノ,クラリネットなど,様々な楽器に対して,その動きを記述する微分方程式モデルが提案されている.このような微分方程式モデルによるシミュレーションに基づく,新たな電子楽器の構築を目指す. また,コンピューターグラフィックスの分野では,映像の描画に物理シミュレーションが利用されることがあるが,サウンドレンダリングと呼ばれる,その際に発生する音も物理シミュレーションで計算しようとする試みが進められている. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 楽器の物理モデルの多くは,力学理論に基づいて導出されており,ハミルトン系としての構造をもつ.また,実際に音を計算するためには,現象の時間スケールに比較して長時間の計算が必要となることが多い.そこで,ハミルトン系としての構造を利用し,長時間計算に有効なシミュレーション手法である離散力学理論を応用することで,安定に計算が可能なシミュレーション手法を開発した. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) ピアノやギターなど,様々な楽器について,運動方程式を解くことにより,弦などの構成要素の動きを物理学に忠実に計算するシミュレーターの開発を進めている. このような方式を採用することにより,演奏者の演奏法に合わせて豊かに音が変化する電子楽器が開発できると期待される. また,同様のシミュレーション手法はコンピューターグラフィックスに応用することで,映像と音を,物理シミュレーションに基づいて同時に描画できるような技術の開発を目指す. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 研究室に配属された学生の希望による. ファイル
自動車のシャフトの歪み解消機の高精度化品質管理の劇的な改善
山本昌宏(東京大学 大学院数理科学研究科 教授)
キーワード:自動車, エンジン, シャフト, ひずみ, 制御ソフトウェア, 自動化, 高精度化, 品質管理, ゲージGR&R
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 自動車のエンジンの動力を車輪に伝えるシャフトの歪みを解消する機械のメーカーから、その機械の改良に関して課題とデータが提示された。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 従来、歪み解消機の制御ソフトウェアの設定(シャフトのどの部分にどの程度の力を加えるか)は現場の経験と勘に頼っていたが、シャフト形状のモデル化と数学的アプローチ(シャフトの歪み解消のために重心を利用する方法や凸解析の手法等)に基づき、自動化・高精度化を可能にするための実用手法を開発した。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) その結果、品質管理指標の一つであるゲージGR&R(一般的に30%以下でないと計測再現性がないとみなされる)が、数学的手法導入前は20-28%程度であったが、導入後は8-15%程度となり大幅に改善された。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 スタディグループ「産業・異分野における課題解決のためのスタデイグループ」(H26.2、H26.12、H27.12)での議論がきっかけとなり、東京大学大学院数理科学研究科と東和精機(株)との共同研究に至ったもの。 ※週刊「ダイヤモンド」(2016年1月23日号55頁)、京都新聞(2015年1月5日)ほか地方紙、「数学セミナー」(2015年12月号73-79頁、2016年2月号70-75頁)等に紹介記事掲載 ファイル
位相的データ解析と確率論・統計学の融合、そして材料科学等への応用
東北大学原子分子材料科学高等研究機構, 九州大学大学院数理学研究院, 統計数理研究所
キーワード:Topological Data Analysis on Materials Science
液体のシリカを急冷するとガラス状態になることが知られているが、液相とガラス相はともに非晶質であることから、相転移による構造変化や相転移点の解明は困難な問題である。 既存のデータ解析手法に、観測誤差やノイズの影響を取り扱うことを可能とする確率的手法や統計的手法の基盤を整備するともに、パーシステントホモロジーの生存時間で重みをつけたカーネル法(PWGK)を提案した。 本手法により、シリカの液相とガラス相の構造変化をデータ科学的視点から抽出することに成功した。 シリカの相転移点の統計的検出の他、タンパク質の立体構造の分類問題などにも本手法を応用し、論文を執筆した。 ファイル
セシウムの土壌浸透モデル式の改良により空中の放射線量の予測精度が向上
東京大学大学院数理科学研究科、筑波大学システム情報系
キーワード:スタディグループ「産業界からの課題解決のためのスタディグループ」(H26.2)
土壌表面に残留しているセシウムは空中の放射線量に大きな影響を与えていると考えられるため、セシウムの土壌浸透度を推定することは、被爆リスクの長期予測のために重要である。 そこで、既存の土壌浸透モデル式について、理論的研究および数値解析手法開発による改良を行った。具体的には、既存モデル式では考慮に入れてこなかった地表面でのセシウムの流出・流入を考慮に入れた。 改良した土壌浸透モデル式による457日後の推定結果と、航空機モニタリングによる空中の放射線量の実測結果を比較したところ、非常に良い一致を確認し、モデル式に十分な予測精度があることが示された。 現在は、モデル式と数学的手法を用いて、今後10年間の推定マップの作成に取り組んでいる。 ファイル
生命現象を検証可能な形で数理モデル化するための新しい方法論の構築とその応用
栄 伸一郎(北海道大学理学研究院 教授)
キーワード: 反応拡散系, パターン形成, ショウジョウバエ, 視覚中枢系, 分化の波
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 生命現象に見られる空間パターンや時間変動を, 直接実験と照合可能な形で数理モデル化すること, および理論解析を可能とするための方法論の構築を目指しています.検証にはショウジョウバエの脳における「分化の波」に特化して, 実験系の研究者と緊密な連携のもとで作業を行い, 方法の有効性を確認します. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 一般多変数反応拡散型モデルを用いて, モデルの詳細に依らない解の普遍的性質を探りました.その解析には中心多様体縮約や分岐理論など, 様々な逓減摂動の方法を駆使して幾つかの本質的運動を抜き出しました.一方, 実験結果との照合を行うことのできる手法として, 積分核を用いた, 新しいモデル表現法を提案しました.一般多変数反応拡散型モデルと積分核による表現は, 反応拡散近似という手法により互いに密接に結びついていることも明らかになりつつあります. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) ・ ショウジョウバエの脳において見られる「分化の波」についてのモデル方程式から予測された現象を変異体の脳を用いて再現するなど, 詳細な検証が成功しつつあります(PNAS 2016).またモデル化のための新しい手法に関しては, 多くのモデルをこの手法で記述し直すことにより, 既存の問題の殆どを含み得ることを確認中です.更に解の普遍的性質を用いることにより, 非線形項などをある程度ブラックボックスのままでも扱うことが可能となってきました.これは楕円型樟脳片の相互作用の解析に用いられ, 成果を上げました. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 生命系との共同プロジェクトや異分野融合ワークショップを通して.互いの研究を紹介し合ったことがきっかけとなりました. ファイル
臨床医学における数理モデリング
水藤寛(東北大学材料科学高等研究所教授)
キーワード:臨床医学、放射線診断学、流体構造連成、数値シミュレーション、数値解析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 臨床医学の現場には様々なデータや経験的知識が蓄積しているが、その解析と理解には新たな視点や方法論が求められていることも多い。臨床医学、特に放射線診断学の分野における様々な問題をターゲットとした。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 偏微分方程式に基づく血流の計算や血管壁の運動の計算を行うこと、及び個人差の大きい血管形状の特徴抽出のために幾何学的な特徴付けを行った。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 大動脈の幾何学的な特徴と、その血流への影響、及びその結果としての壁面応力分布への影響を調べ、その関係性を理解することにつなげた。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 さきがけ研究に応募するに際して、それまで小規模なつながりのあった臨床医と議論し、さきがけ研究として放射線医学と数理科学の連携を始めた。その研究が発展し、CREST研究においてより大規模な連携を進めることになった。 ファイル
細胞極性と細胞移動の数理モデル
秋山正和(北海道大学 電子科学研究所 助教)
キーワード:数理モデル,形態形成,発生生物学,数値解析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 ゼブラフィッシュ胚の体節形成では,細胞群が自発的に運動を行い伸長を行う.同様の形態形成は細胞性粘菌やある種のがん細胞でも見られる.一方,どのようなメカニズムによりそのような形態形成を行っているかは不明であり,さらに実験的な手法だけでは解析することは非常に困難である.そこで,本現象に数理モデルを用いて細胞運動の数理を明らかにしようとしている. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 細胞の運動と細胞極性には密接な関係があるが,集団運動モデルとして有名なビチェックのモデルをベースに細胞移動と極性に関する新しい数理モデルを提案した.提案したモデルは,最大6つの項からなり,生物学的に妥当な仮定を用いて導出された.未定パラメタを含みかつ手計算による解析が困難であるため,数値解析の技法を用い,数値計算を行った. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 計算から新しい運動モードを発見し,さらに実験により追認された. 体節の伸長方向を決定するいくつかの機構を提案した.現在,実験研究により,それらの機構の妥当性を検証中である. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 新学術領域研究の公募研究ファイル
Phase Field 型細胞表現モデル
秋山正和(北海道大学 電子科学研究所 助教)
キーワード:数理モデル,形態形成,計算機科学,数値解析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 細胞の形を計算機の中で効率的に扱うことが,様々な数理科学・生命科学の現場で求められている.有名な方法として,粒子法,バーテックスダイナミクス法,レベルセット法などがあり,その特性に応じて使い分けられている.我々はこのような方法に新たな手法を付け加えるべく,細胞をPhase Field法で表現するための数理的研究を行っている. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 結晶成長のモデルとして有名なPhase Field法を細胞の形を表現するための秩序変数として使用した.細胞の分裂・成長・移動などを容易に計算可能であることが示されており,リアルな細胞表現を低コストの計算で行うことができる. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 卵細胞の分裂過程を初めて3Dでリアルにシミュレートすることができた. 本モデルは式の形が反応拡散系であるため,数理的な解析を行うことができる. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 所属研究室のメンバーとの共同研究ファイル
細胞極性に関する数理モデル解析
秋山正和(北海道大学 電子科学研究所 助教)
キーワード:数理モデル,形態形成,発生生物学,数値解析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 我々ヒトを始め,多くの生物は体表面に毛を持ち,その毛の方向が特定の方向へ揃う現象がある.この現象はショウジョウバエの体表面でみられ,平面内細胞極性が引き起こす現象であるとされている. 平面内細胞極性に関する理論的・実験的研究を行っている(秋田大 山崎准教授との共同研究).我々が出版したCell Reportsの論文によりPCPの本質部分について,その一端が解明された. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 現在本モデルで提案された数理モデルに対する数理解析を行っている.数理解析の結果,特定の条件下で数式が非常に簡単な1変数モデルへと帰着できることがわかった. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 1変数モデルに対しては解を構成し,その解の安定性に関して数値計算を援用することで議論することができ,細胞数が3,15,36,76のケースまで証明できた. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 新学術領域の公募研究時の共同研究においてファイル
ショウジョウバエ後腸の捻転現象に関する数理的研究
秋山正和(北海道大学 電子科学研究所 助教)
キーワード:数理モデル,形態形成,発生生物学,数値解析, 3Dバーテックスダイナミクスモデル
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 大阪大学・松野教授グループとショウジョウバエ後腸の捻転メカニズムに関して共同研究を行っている.自然界のショウジョウバエの後腸は必ず片方側だけに捻転するが,松野教授(阪大)の発見した蛋白(Myo31df)により捻転方向を逆転することができる.この逆転現象は後腸だけでなく,他の臓器も逆転することから,形態形成において非常に重要なメカニズムが内包されている可能性がある. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 実験事実を数理的に検証し,仮説:「個々の細胞のキラリティーが増幅され,器官全体の非対称性化が進む」ということを提案した.さらに3次元のVertex Dynamics Modelを構築し数値計算を行うことで,少なくとも数値計算上では,正しいことが示された. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) シミュレータから実際の細胞のねじれ角が非常に小さくても,全体の形態は大きく捻転することがわかっている.実験データにノイズが多いため,直接的な実験データだけから,上記の仮説を証明することは難しい.そのため,ノイズの多いデータから真の実像を推定するような方法論を構築中である. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 新学術領域の公募研究時の共同研究ファイル
ショウジョウバエ複眼の形態形成に関する数理的研究
秋山正和(北海道大学 電子科学研究所 助教)
キーワード:数理モデル,形態形成,発生生物学,数値解析, 2D or 3Dバーテックスダイナミクスモデル
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 金沢大学の佐藤教授等との共同で,ショウジョウバエの複眼の形態形成に関して研究を行っている.通常の複眼は6角形の小さい個眼からなるが,ある特殊な遺伝子操作を行ったハエでは,この個眼が4角形に変化する.この結果,複眼全体の形にも変化が生じるが(図参照),どのようなメカニズムにより生じるかを研究することが目的である. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 物理的には6角形のハニカム構造は最も安定な構造であるが,何らかの不均衡が生じ4角形化することが示唆される.そこで,このような構造変化を計算するために都合のよいバーテックスダイナミクスモデルを用いた. バーテックスダイナミクスモデルでは,ある種のエネルギー汎関数を考えることで,系全体に生じうる変化を計算可能であるが,数学的には対称性の高い系にどのような要素があれば,このような形ができるかという点に絞って研究中である. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 2Dモデルでは,検討したパラメタ範囲では,四角形化が顕著化しなかった.このことから,現象を捉えるためには何らかの対称性を崩すメカニズムが不足することがわかった.そこで,現在は3Dにおいて計算モデルを構築中である. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 新学術領域の公募研究時の共同研究ファイル
自己駆動粒子運動の数理解析
長山雅晴(北海道大学電子科学研究所)
キーワード:数理モデリング,数値計算,力学系,分岐理論,非線形物理,ソフトマター,物理化学,表面張力
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 物理学・化学の分野で扱われている自己駆動粒子に見られる様々な運動について理論的に解明する. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 自己駆動粒子運動に対する数理モデリング,数理モデルに対する数値シミュレーション,力学系理論を応用した数値分岐計算,計算機援による解の存在とその安定性解析. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 自己駆動粒子運動の数理モデルの構築に成功した.この数理モデルは比較的広範囲の現象に適応できることが共同研究の中で明らかになった.多粒子系の現象も説明できる数理モデルを構築できた(図1).我々の構築した数理モデルが非線形物理の分野で用いられることが多くなった. D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 非線形現象の研究集会に参加し,そこでポスター発表を行っている研究者と議論を行ったことがきっかけで共同研究が始まった.ファイル
自走液滴に対する数理モデリング
長山雅晴(北海道大学電子科学研究所)
キーワード:数理モデリング,離散勾配流法,,非線形物理,ソフトマター,物理化学,表面張力
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 物理学・化学の分野で扱われている液滴運動の融合現象や反発現象について理論的に解明する. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 液滴運動の数理モデリング,自由境界値問題,離散勾配流法を用いた数値計算 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 自走する液滴は,適当な大きさでは自走し,大きな液滴は分裂する(図1C)ことが知られている.また,小さな液滴は衝突時の角度によって反発したり(図2.a),融合したりする(図2.b). 液滴と水面の接触角もこめてこの現象を記述する数理モデルを構成することに成功した.図3(a)は体積の小さな液滴の並進運動,図3(b)は体積の大きな液滴の分裂現象を再現した数値実験結果である.図3(c1,2)は液滴の衝突角度に依存して反発や融合を起こす現象を再現している. D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 2004年から毎年非線形現象勉強会を開催しており,その勉強会の発表で実験結果の発表があり.研究を開始した.ファイル
脳形成過程に見られるプロニューラルウェーブの数理モデリングと実験
長山雅晴(北海道大学電子科学研究所)
キーワード:数理モデリング,数値計算,反応拡散系,発生生物学,プロニューラルウェーブ,EGF.Delta-Notch
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 ショウジョウバエの脳形成過程にみられる分化波に対する数理モデルからの理解 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 数理モデリング,数理モデルに対する数値シミュレーション,計算機援用解析,縮約理論 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) EGF拡散とDelta-Notch系を組み合わせた数理モデルの構築に成功した.この数理モデルはPronural wave 対する実験系を説明することができた.この数理モデルはDelta-Notch系として知られているショウジョウバエの複眼形成プロセスで見られるごま塩パターンも再現することができた.プロニューラルウェーブからゴマシオパターンへの変化はEGFの拡散が本質的であることを数理モデルから示唆し,実験系によって検証することに成功した.この研究では数理科学駆動による生命科学の現象解明を行うことができた. D:どのようなきっかけで、その諸分野・企業との連携が始まったか。 生命系の研究者と数理モデリングの研究打ち合わせを行っているときに,ショウジョウバエの発生初期にみられる分化波について実験系を紹介された.ファイル
先端的確率統計学が開く大規模従属性モデリング
吉田 朋広(東京大学大学院数理科学研究科教授)
キーワード:従属性、確率過程、統計推測、確率解析、統計的学習理論、超高頻度データ、YUIMA
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 今日、計測とストレージ技術の発展によって、超高頻度ビッグデータが利用可能になっている。データは強従属、高次元、非線形、非エルゴード的となり、現象のモデリングと予測を可能するための確率過程の統計学の構築は、時系列データが現れる諸科学の発展に関わる普遍的な課題である。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 数理統計学(漸近決定理論、確率場の収束理論、ベイズ統計、情報量規準、ノンパラメトリック統計)、確率論(極限定理、漸近展開、セミマルチンゲール理論、マリアバン解析、レビ過程、フラクショナルブラウン運動)、統計的学習理論(スパース推定、正則化法)、計算機統計学(MCMC、最適化)が使われているが、関数解析、微分方程式論、微分幾何、計算機科学など確率統計学以外の分野も広く関わっている。自ら構築した擬似尤度解析・非同期共分散推定・漸近展開の理論は重要な役割を果たしている。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) リミットオーダーブックのモデリング、時系列間の因果律を発見するリードラグ解析法、擬似尤度解析による従属モデルでのベイズ推定量の漸近挙動の解明、高速なMCMCアルゴリズムの開発、確率微分方程式のマルチステップハイブリッド推定量の提案、LASSOなどの正則化法の従属モデルにおける挙動の解明、QBICなどの情報量規準、無限次元確率解析によるウイナー汎関数の漸近展開理論などの成果を得ている。また、Rパッケージ YUIMA および yuimaGUI として、非専門家も容易に最新の結果が利用できるようになっている。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 金融高頻度データ解析はもとより確率過程の統計学の応用分野であったので連携は自然に始まった。また、我々が提唱したオプション価格の漸近展開による近似法や非同期共分散推定法は広く使われており、金融ソリューション企業との共同研究もある。ファイル
心臓血管系データの呼吸位相領域解析
小谷潔(東京大学先端科学技術研究センター)
キーワード:心拍変動,呼吸性洞性不整脈,非侵襲連続血圧,振動子,位相
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 非侵襲生体計測における,データから内部状態を読み取る技術.特に,自律神経による心臓血管系の調節機構の評価 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 力学系理論,同期現象の解析などで用いられる振動子の解析手法. 従来は心臓血管系の信号は時間領域,および周波数領域で解析されていた.周期的な変動である呼吸が心臓血管系に大きな影響を与えている点を考慮し,データを呼吸位相軸で解析する手法を提案した. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 呼吸位相領域での解析によって,呼吸が心臓血管系に影響を与える複数の経路が明らかになり.また立位と座位の比較から自律神経活動の関与を定量化することができた.また,その後本手法は外部刺激に対する心血管系の応答を少ない試行から評価する手法,および非侵襲自律神経評価手法に展開していくなど,基礎的な生理学的な相互作用評価から生活環境下での応用技術まで広く利用可能であることが示された. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 私自身が数理解析と生体計測の融合領域の研究を目指していく過程で基本的なアイデアを着想するに至った.その後幅広い分野の方からの助言,アドバイスなどを頂き,当初の予定より広い領域の研究に発展していった.ファイル
データ空間の曲率を用いた気象データ解析
小林 景(慶應義塾大学 理工学部)
キーワード:気象データ解析,CAT(k)空間,曲率,測地距離,Fréchet平均
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。   イギリスのMet Officeが公開しているイギリス国内の降雨量データおよび日本の気象庁が公開しているアメダスデータに対して,その年周期性が過去数十年でどのように変化したかをデータの幾何学的構造に着目して調べ,これまでに検出されなかった新しい種類の気象変動を調べることを目指した. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか   データ点を頂点と持つようなグラフにより,データが乗っている空間(データ空間)の測地距離を近似した.さらに,CAT(k)性とよばれる曲率の変化に着目して距離変形を行い,それに伴う新しい種類の分散を提案した. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 幾何学的な構造を考慮した新しい分散を用いて過去の降雨量データを調べたところ,これまでの分散の定義ではとらえられなかったような年ごとの降雨量データの「ばらつき」の増大が観測された. 今後は気象の周期性をより細かくとられるための数理的な指標の開発を目指す. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。   London School of Economicsで気象時系列データの解析を行っているCentre for the Analysis of Time SeriesのHenry Wynn教授との共同研究をきっかけに本研究が始まり,気象データを扱う研究者へと交流が広まった.ファイル
自動プログラム検証に有用な論理式の自動生成手法
末永 幸平(京都大学 大学院情報学研究科)
キーワード:プログラム検証、不変条件、システムの安全性担保,物理情報システム,IoT
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 様々なシステムがソフトウェアの制御を受ける現代において,プログラムの安全性を担保することが多くの産業において重要な課題となっています.自動車産業や航空産業等の特に高度な安全性が求められる分野では,プログラムの安全性を数学的に証明する形式検証という技術が重要になっています.ただし,現在の形式検証技術ではプログラムが複雑になると検証が難しいという問題があります. B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 多項式の斉次性と呼ばれる概念を一般化して得られる一般化斉次多項式の性質や,Positivstellensatz と呼ばれる多項式を伴う不等式系に関する定理を,検証アルゴリズムにおいて用いています. C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) 一般化斉次多項式の性質を用いたアルゴリズムによって,従来のプログラム検証手法を最大で数十倍高速化することができました.また,Positivstellensatz から導かれる補題に基づいて,プログラム検証で頻繁に用いられる不等式系の充足不能性の証拠となる論理式を半正定値計画問題で生成する従来より強力な手法を開発しました.これらの成果を物理情報システムと呼ばれる,ソフトウェアで制御される物理システムの検証に適用することを目指しています. D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 京都大学の新技術交流会での研究内容の紹介やこれらの技術に伴う発明の特許出願等をきっかけとして,複数の企業様からのコンタクトを受けております.ファイル
ウイルス感染に対する宿主応答の統計解析
中岡 慎治(北海道大学大学院先端生命科学研究院)
キーワード:ウイルス、免疫、T 細胞、次世代シーケンス、遺伝子発現解析、統計解析、情報解析
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 ウイルスが宿主内で増殖する際、宿主側の機構を巧みに利用する。ヒト免疫不全ウイルス (HIV) は、宿主側の免疫応答 (BST2) から逃れるためのウイルスタンパク質 Vpu を巧みに利用している可能性は示唆されてきたが、HIV はヒトとチンパンジーのみ感染し実験検証できないため、生体内 (in vivo) における機構は不明であった。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 HIV 感染を可能にしたヒト化マウスを利用した生体内の CD4 陽性 T 細胞に対する網羅的遺伝子発現データを解析し、抗 HIV 活性下でもウイルスが免疫回避できる仕組みを調べるため統計・情報解析手法を実施した。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) HIV 感染前後の細胞の遺伝子発現状態を比較解析したところ、宿主側の抗 HIV 活性 (BST2) 存在下でも感染除去に至らない可能性を見出した。情報統計解析によって HIV 感染持続に関与する因子の候補を選定した。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 以前は別の研究課題で共同研究を行っていたが、ウイルス感染に対する宿主応答の統計解析を実施するための新たなプロジェクトが、研究議論の中から生まれた。ファイル
ウイルスの適応的な感染成立機構の解明
中岡 慎治(北海道大学大学院先端生命科学研究院)
キーワード:ウイルス、免疫、T 細胞、細胞イメージング、個体群動態数理モデル、確率過程シミュレーション
A:どんな諸分野・企業の、どんな問題や現象をターゲットにしたか。 ヒト T 細胞白血病ウイルス (HTLV-1) が免疫応答を逃れて慢性感染する機構の解明は HTLV-1 研究の中心課題である。HTLV-1 複製・維持に必須のタンパク質 Tax が間欠的に発現していることをイメージングにより見出し、その機構を解析したが、なぜ間欠的な発現が観察されるかを説明するための理論的根拠が求められた。 B:どんな数学・数理科学をどのように使ったか。 実験データを定量的に説明可能な Tax タンパク質発現を表現した細胞内数理モデルと Tax 発現のアポトーシスにおよぼす影響を考慮した細胞集団の数理モデルを構築し、確率シミュレーションを実施した。 C:どんな成果が得られたか。(あるいは、どんな成果を目指しているか。) [1] Tax の間欠的発現が免疫回避とウイルス生存を最適化する戦略である可能性 と [2] Tax 発現がたとえ間欠的かつ発現期間が短くても (数十時間)、細胞集団レベルでは HTLV-1 の長期生存・維持 (年単位) に決定的であることを示唆した。 また、Tax を発現している細胞の割合が約5%以下であるにも関わらず、Tax 発現を経験するだけで、経験しない場合と比べて体内での HTLV-1 感染細胞の生存が劇的に増加する可能性を示した。 D:どのようなきっかけでその諸分野・企業との連携が始まったか。 個体群動態数理モデルの解析と確率過程シミュレーション手法開発と応用の実績があったため、ウイルス学と数理モデル研究を行っている研究グループから誘われて、共同研究を始めることとなった。ファイル
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