ACTIVITY REPORT活動報告・技術相談(マッチング)

CREST・さきがけ・AIMaP合同シンポジウム「数学パワーが世界を変える2018」

 AIMaP事業では、数学の諸科学・産業との協働を促進するための様々な活動に取り組んでいます。その一環として、AIMaPチュートリアル「最適化理論の基礎と応用」、AIMaP公開シンポジウム「数学と産業の協働ケーススタディ」を2018年1月18日、19日に開催いたしました。これらの研究会は国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)とAIMaP事業との合同企画『CREST・さきがけ・AIMaP合同シンポジウム「数学パワーが世界を変える 2018」』の一部として開催されたものです。

2018年1月18日:
AIMaPチュートリアル「最適化理論の基礎と応用」

 本企画では、産業や諸科学において近年とみに重要性を増している最適化理論とその応用に関して非専門家向けの講義をしていただくチュートリアル研究会を開催いたしました。
 当研究会の前半では、離散最適化理論の研究で大きな成果を上げられている神山直之准教授(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)を講師としてお招きし、「線形計画法入門」と題して線形計画法における問題設定とその解法、および計算機を用いたプログラミングの基礎と活用例についてご講義いただきました。神山先生と富士通研究所との社会実装に関する共同研究が話題となったマッチング問題の基礎についても当講義の主題の一つとして解説していただきました。
 後半は、計算機を援用した形状最適化理論のパイオニアで、製品設計への応用で大きな成果を上げてこられた畔上秀幸教授(名古屋大学情報学研究科)にご担当いただきました。最適設計問題の基礎とその解法、および実際の工業製品設計における応用例について解説が行われたほか、この種の問題に活用されている有限要素法ソフトウェアFEM++を用いた形状最適化に関するパソコン実習を実施していただきました。  当講義の資料はMIレクチャーノート1として出版されたほか、各講義のビデオは九州大学公式YouTubeチャンネル2にて公開されており、今後この分野の基礎・応用に興味のある方に活用していただけることを期待しています。

2018年1月19日:
AIMaP公開シンポジウム「数学と産業の協働ケーススタディ」

 AIMaPチュートリアルに引き続く本シンポジウムでは、数学・数理科学と諸科学分野・産業との連携を積極的に行っている数学関係者と企業等の研究者を講演者としてお招きし、専門家・一般聴衆を対象として研究内容や企業における社会実装の具体例についてご紹介いただきました。通常の研究会では聞ける機会の少ない、異分野協働を行う際の苦労話や経験談を産業界と若手研究者の双方から紹介していただくことが本研究会の目的でした。聴衆としては数学・諸科学分野と産業界などから約100名が訪れ、数学と諸科学・産業との協働への関心の高さが伺われました。
 ワークショップのプログラム前半では応用数学研究者から、プログラム後半では企業人の方々から、研究内容やこれまでのキャリア・異分野連携の実績の紹介、および異分野連携のきっかけなどについての紹介が行われました。また、研究会総括に代えて、全講演者をパネリストとしたパネルディスカッションを開催し、聴衆も交えた討論の場を設けました。日本の産業界における状況改善のため数学への期待が大きいこと、産業界と数学・諸科学分野とをつなぐインターフェースとなる人材育成が望まれることなどが指摘されました。また、数学者と異分野・産業界の双方にとって有益となるテーマ設定の困難さについても言及がなされ、共同研究体制を今後改善していくことが重要であるとの意見が共有されました。
 本研究集会は学問分野と産業界との合同研究集会であり、そのため通常の研究会では聞けることのない意見や協働ノウハウを共有することが可能となりました。今後もこのような交流型研究集会や実際の協働の場を設けることで、数学者と異分野・産業界との相互交流と共同体制構築につなげることが有益であると考えられます。

  1. http://www.imi.kyushu-u.ac.jp/publishes/pub_inner/id:2
  2. https://www.youtube.com/playlist?list=PLVhByfY_xuBI2bvCG4IAasKPbsQIOo-gt

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