2019年8月28日〜30日に東京工業大学で開催されたセキュリティ国際ワークショップは情報処理学会コンピュータセキュリティ研究会(CSEC)および電子情報通信学会情報セキュリティ研究会(ISEC)が主催するセキュリティ分野の日本で開催される国際会議で、今年で14回目を数えます。今回、情報セキュリティ技術において重要な役割を果たす数学理論の考え方と最近の傾向を共有することを目的として、本国際会議でのAIMaP特別企画セッションを企画しました。数学科出身で暗号研究の第一人者である欧米応用暗号研究者英国ロイヤル・ホロウェイ(ロンドン大学)のCarlos Cid教授、そして、NEC研究所の佐古和恵氏に招待講演をお願いしました。Carlos Cid教授の講演「Domain Specific Ciphers」では、様々な代数的暗号手法についての紹介と課題が紹介されるとともに、Cid教授が創設した英国の産官学連携のための博士課程大学院生のための情報セキュリティ教育センター(Center of Doctoral Training in Cyber Security)の教育プログラムが紹介されました。また、佐古和恵氏の講演「Mathematics and Cryptography for Society」では、ブロックチェーン技術の理論と実際の両面からフィンテックを含む多様な応用についての解説がありました。応用技術の中の要素技術としての数学理論だけではなく、数学理論に内在する考え方から生まれた新技術の紹介などもあり、数学の魅力について再認識できる企画内容であったと思います。
耐量子暗号など、未来のセキュリティにつながる研究、更には数学・数理科学分野と情報セキュリティ分野の人的交流の推進と将来の技術発展のためのキャリアパスや人材育成の観点での議論も交わされました。社会ニーズに対して、数学・数理科学の研究者から拡がる人々のプラットフォームを武器に解決策を提示していけるように引き続き各種研究集会やワークショップなど企画して参りたいと思います。